12.3. Java SE 8からJava SE 11までの主要な変更点

本章では、Java SE 8からJava SE 11にマイグレーションする開発者に向け、本ガイドラインで解説している機能に関連のある主要な変更点を解説する。 詳細は、各章を参照されたい。

なお、本章はOracle JDK Migration Guideに基づいて執筆している。より理解を深めるため、こちらも一読されたい。

12.3.1. Java SE 9から非推奨となったJava EE関連モジュールの削除

Java SE 11では、Java SE 9から非推奨であったJava EE関連のモジュールが削除された。 詳細については、Oracle JDK Migration GuideのRemoval of Java EE and CORBA Modulesを参照されたい。

これにより、本ガイドラインで解説している機能のいくつかを正常に動作させるには、これらの代替となる依存ライブラリを追加することが必要となる。 以下に、本ガイドラインで記載のあるモジュールを紹介する。

なお、以下で解説する依存ライブラリの追加はあくまで検証の一結果に過ぎず、アプリケーションの実装(依存しているライブラリの種類)と動作環境により異なる対応が必要な場合があることに留意されたい。

12.3.1.1. JAXBの削除

Java SE 11でJAXBを利用する場合、jaxb-core及びjaxb-implが必要となる。 アプリケーションの依存ライブラリやAPサーバから提供されるライブラリにjaxb-core及びjaxb-implがない場合は、下記のようにpom.xmlに依存関係を追加すること。

<dependency>
    <groupId>com.sun.xml.bind</groupId>
    <artifactId>jaxb-core</artifactId>
    <version>${jaxb-core.version}</version> <!-- (1) -->
</dependency>
<dependency>
    <groupId>com.sun.xml.bind</groupId>
    <artifactId>jaxb-impl</artifactId>
    <version>${jaxb-impl.version}</version> <!-- (1) -->
</dependency>
項番 説明
(1)
任意のバージョンを指定する。

なお、上記ではJAXBを動作させるための実装ライブラリを追加している。JAXBのAPIを利用するソースコードがある場合、コンパイルのためAPIライブラリが必要となる。

12.3.1.2. JAX-WSの削除

Java SE 11でJAX-WSを利用する場合、以下のようにjaxws-api及びjavax.jws-apiを依存関係に追加する必要がある。

<dependency>
    <groupId>javax.xml.ws</groupId>
    <artifactId>jaxws-api</artifactId> <!-- (1) -->
</dependency>
<dependency>
    <groupId>javax.jws</groupId>
    <artifactId>javax.jws-api</artifactId>
    <version>${javax.jws-api.version}</version> <!-- (2) -->
</dependency>
項番 説明
(1)
jaxws-apiのバージョンはterasoluna-gfw-parentが依存しているSpring Bootで管理されているため、pom.xmlでのバージョンの指定は不要である。
(2)
任意のバージョンを指定する。

なお、JAX-WSを動作させるための実装は各APサーバまたはApache CXFによって提供される想定であり、上記ではアプリケーションのコンパイルに必要となるAPIのみを追加している。

jaxws-riはjaxws-api及びjavax.jws-apiを含むJAX-WS実装をカバーするライブラリだが、Java EEサーバやApache CXFのJAX-WS実装に干渉し、Java SE 8での実行と異なる挙動を示す場合があるため、jaxws-riの利用は推奨していない。 例として、jaxws-riを利用した場合、Apache CXFのタイムアウト値として認識されるプロパティが変わってしまう事象を確認している。

12.3.1.3. Common Annotationsの削除

Java SE 11でCommon Annotationsを利用する場合、以下のようにjavax.annotation-apiを依存関係に追加する必要がある。

<dependency>
    <groupId>javax.annotation</groupId>
    <artifactId>javax.annotation-api</artifactId>
    <version>${javax.annotation-api.version}</version> <!-- (1) -->
</dependency>
項番 説明
(1)
任意のバージョンを指定する。

なお、Common Annotationsを動作させるための実装は各APサーバによって提供される想定であり、上記ではアプリケーションのコンパイルに必要となるAPIのみを追加している。

12.3.2. デフォルトで使用されるロケール・データの変更

Java SE 9以降では、Unicodeコンソーシアムの共通ロケール・データ・リポジトリ(CLDR)データがデフォルトのロケール・データとして有効化されている。

これにより、Java SE 9以降では、Java SE 8以前とは日付、時間、数値などの書式で文字列を出力した場合に結果が変わる可能性がある。

Java SE 11の標準の設定値から変更してJava SE 8以前と同じ書式で出力したい場合は、システム・プロパティjava.locale.providersのCLDRの前にCOMPATを設定する必要がある。(例:java.locale.providers=COMPAT,CLDR,SPI)

詳細については、Oracle JDK Migration GuideのUse CLDR Locale Data by Defaultを参照されたい。

12.3.3. HTTP通信におけるTLS(Transport Layer Security) v1.3のサポート

Java SE 11より、TLS(Transport Layer Security) バージョン1.3がサポートされ、デフォルトで1.3が使用されるようになった。

しかし、2019年現在ではOSやミドルウェアがTLS 1.3に対応していないものも多いのが現状であり、まだしばらくはTLS 1.2が利用されると考えられる。

これに対応するため、Java SE 11ではJVMレベルで利用するTLSのバージョンを変更することが可能である。 クライアントで使用するバージョンは、JVMのシステム・プロパティjdk.tls.client.protocolsを設定することで変更可能である。 APサーバを介さずに公開するサーバで使用するバージョンは、同様にシステム・プロパティjdk.tls.server.protocolsを設定することで変更可能である。

詳細はJDK 11 Release Notesを参照されたい。

Note

LinuxのSSL通信を制御するopenssl はバージョン1.1.1でTLS 1.3に対応するが、コンパイル済みのパッケージは頒布されておらず、開発者が自らコンパイルして組み込む必要がある。 Tomcat等のミドルウェアはopensslを利用してHTTPS通信を行なうが、ミドルウェアが内包するopensslをアップデートするためには、ミドルウェア自体も再コンパイルする必要がある。 同様に、opensslをアップデートすることによりOSの機能が正常に動作しなくなる可能性がある。

このため、独自にopensslをコンパイルしてアップデートすることは、一般的な開発者には推奨しない。 TLS 1.3に対応したopensslを内包したOSにアップデートして、環境を構築しなおすべきである。